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中小企業診断士 資格試験体験記
中小企業診断士 実務補習(3回目)

1.最後の実務補習開始

 平成22年9月。ついに来ました。第3回目となる実務補習の事前メール。長かった実務補習も今回でラストです。指導員の先生のメールによると、今回の診断先の業種は製造業。製造業勤務の自分としては、やっと来たかといった感じです。


1日目(9月10日・金)
 今回の診断先は名古屋から少し遠いので、診断先近くの駅に現地集合。そして指導員の先生と同じ班のメンバーに初顔合わせ。この時期になると、今回が初めての実務補習だというメンバーもおらず、みな一度は経験している人ばかりで要領は得ています。名刺交換などを済ませ、少し打ち合わをした後、早速診断先企業に向かいます。

 電車に揺られること30分。今回の訪問先企業に着きました。今日は製造現場の視察と従業員へのインタビューです。まずは製品の製造工程に沿って工場を案内してもらいます。かなり特殊な製品を作っている会社なので、製造現場を一度見ただけで全てを理解するのは不可能ですが、大まかな仕事の流れは理解することができました。
 その後は、会議室で製造現場担当者、経理担当者、営業担当者へのインタビュー。実務補習メンバーが各々質問します。やはり自分と同じ製造業で働く人たちだけあって、この不況下で抱えている不安などは似ているのだなと感じました。

 インタビューの時間も押したので、本日は現地解散。意外と早く帰れました。

2日目(11日・土)
 朝は名古屋の会議室に集合。本日再び企業を訪問して社長へのインタビューを行うため、その打ち合わせをします。

 午後から企業訪問。社長と初対面。メンバーがそれぞれ担当する報告書のパートに関する質問をします。社長へのインタビューはこれで3回目ですが、全ての社長に共通することは「皆話し好き」だということです。やはり社長たるもの口が立たなければ何かと不都合があるでしょうが。インタビューをする時はこのことを念頭に置いておかないと、想像以上に時間が長引くかもしれません。

 インタビュー終了後は、名古屋の会議室に戻り診断報告書の内容の打ち合わせを行います。診断先企業が遠く移動に時間を取られたため、結局9時頃までかかりました。


自主学習(12日・日~18日・土)
 各自で診断報告書の担当パートを書き始めます。今回は最初に日曜日と最後に土曜日があるため、比較的報告書を書く時間に恵まれた日程だと思います。もっとも私は最初の日曜日でほとんど書き上げましたが。やはりインタビューしてからすぐに書き始めた方が、記憶が鮮明で書きやすいと思います。(あとメモの字が汚いので時間が経つと読めなくなります)

3日目(19日・日)
 前2回の実務補習は会議室で打ち合わせを行いましたが、今回は指導員の先生の事務所に集合。報告書の内容を調整します。ネット環境もあり、非常に快適に作業ができました。

4日目(20日・月)
 本日も指導員の先生の事務所に集合。午前中は報告書の最終調整。午後からはパソコンで全員の報告書の合体、診断調査表の作成などを行います。そして今回初めて、発表にパワーポイントを使うため、そのスライド作成も行います。
 夕方は報告書の印刷。今までの実務補習ではコピー&製本のためにキンコーズに行っていましたが、今回は指導員の先生の事務所にあるプリンターを借りられました。おかげでずいぶんと費用を安く抑えることができました。
 時間も少し余ったので、明日のプレゼンのリハーサルを行い本日は終了。

5日目(21日・火)
 最終日。午後1時から社長へのプレゼンのため、初日と同じく現地集合。皆で昼食を取った後、訪問先企業に向かいます。

 そして午後1時からプレゼン開始。前2回の実務補習では社長にのみ報告しましたが、今回は社長はもちろん幹部従業員、銀行関係者などギャラリーが10名ほどいました。結構緊張します。質疑応答なども含めて、1時間半ほどでプレゼン終了。社長の反応もまずまずといったところでした。

 その後、電車で名古屋まで戻り診断協会に行き、報告書の提出、診断士登録など事務的作業を行います。これにて長かった実務補習も修了。そして最後はやはり打ち上げへ。晴れて全ての実務補習が終わった開放感もあり少し飲みすぎました。


2.実務補習総まとめ

 まず今回の実務補習で感じたこととしては、製造業はどこも状況が厳しいということを改めて実感しました。景気の底は脱したと言われていますが、現実は円高やレアアース高騰、大手からの仕事減少など様々な問題を抱えています。今回訪問した企業も自分の勤める会社もそうですが、まだまだ業績が回復し経営が安定するには時間が掛かりそうだと思いました。


 これにて全3回の実務補習が終わったわけですが、終わってみればなかなかいい制度だと思います。年齢もバックボーンも違うまったく見ず知らずの人が集まり、見ず知らずの会社のために一生懸命話し合う機会はそうはありません。確かに15万円は安くありませんが、普通の日常生活ではありえない経験をさせてもらいました。人見知りの私は実務補習が始まるまで不安で仕方ありませんでしたが、今は心から受講してよかったと言えます。


3.最後に

 最後に私が実務補習前に疑問に思っていたことや、実務補習中に知ったことなどについてまとめておきます。

・実務補習は厳しいか?

 実務補習が始まる前は誰しも不安です。私も事前にインターネットで厳しいという噂を聞いていたので、かなり不安でした。
 まず、指導員の先生についてはそんなに厳しくありません。少なくとも出来が悪くて罵倒されたり鉄拳制裁されたりすることはありません(当たり前か・・・)。ただ指導員によってかなりこだわりが違います。「ここだけはしっかりやろう」とか「ここはまあ適当でいいよ」といったポイントがそれぞれ異なるため、うまく合わせるのが実務補習を上手く乗り切るコツかもしれません。
 次に報告書作成ですが、これは人によっては非常に厳しいと思います。日夜仕事に追われ深夜まで残業が当たり前のような人にとっては、なかなか報告書を書く時間を都合できずに徹夜になることもあります。反対に私のように当然土日休みで残業もない人にとってはそれほど苦ではありません。報告書は平均して一人10ページほど書きますが、インタビューをしっかり行えればスラスラ書くことができると思います。


・診断報告書は製本するのか?

 これは指導員によってまちまちです。私の場合、第1回目は診断先、指導員、診断協会提出用、実務補習生用すべての報告書を製本しました。その分費用も多くかかりました。第2回目では診断先に提出する報告書のみ製本し、指導員、診断協会、実務補習生は白黒印刷にパンチで穴をあけてファイルに綴じただけでした。第3回目は、診断先には製本したものを提出しましたが、指導員と診断協会はファイル、実務補習生にいたっては印刷せずに電子データのみでした。


・実務補習ではパワーポイントが必要か?

 これは必ずしも必要ではありません。私が3回目の実務補習で訪問した企業はたまたまプロジェクターとスクリーンがありましたが、そのような設備がない中小企業がほとんどです。指導員が持っている場合は、機材を持ち込みプレゼンを行う場合もありますが、稀でしょう。3回目の実務補習では、実務補習生の中でパワーポイントを持っているのが私だけだったので、私以外の人は指導員の先生の事務所でパソコンを借りてパワーポイントの画面を作りました。確かにパワーポイントを持っていたほうが安心ですが、わざわざ買うほどではありません。


・中小企業診断協会には入会するべきか?

 最後の実務補習後に診断協会への入会申込みをすることができます。実務補習が3回目の人は、たいがい指導員の先生から入会のお誘いがあります(ノルマがあるらしい・・・?)。私は全3回の実務補習でこれが最後の実務補習だという人に6人会いましたが、入会したのは1人だけでした。そして私も入会はしませんでした。5人が入会しなかった理由としては、まずサラリーマンであり診断士として独立するつもりがないため入会のメリットがあまりないこと、診断協会の年会費が結構高いことなどです。そして何より中小企業診断士は税理士や弁理士などと違い、協会に入会しなくても資格を名乗ることができるのが大きな理由だと思われます。
 入会することにメリットがある人としては、

 ・独立して診断業務を行うつもりであり、仕事がほしい人
 ・診断協会が行うセミナーや研究会・懇親会に興味がある人
 ・中小企業診断士試験の試験官をやってみたい人
 ・実務補習の指導員をやってみたい人

といったところでしょうか。逆にいえばサラリーマンで資格を取得した人にとってのメリットはあまりないともいえるかと思います。自分もいまひとつ高い入会金を払って入会するメリットが感じられなかったため見送りました。
 今後、あまりに診断協会への入会者が少ないと、いずれ運営難のため診断協会入会が中小企業診断士を名乗るための条件となるのではないかと密かに心配しています。そうならないためにも協会には、もっと明確な入会メリットを提示してもらいたいと切に願います。


・H21年度 第2次試験 事例Ⅳについて

 実務補習の飲み会で、よく第2次試験の事が話題になりました。特に昨年(平成21年度)の事例Ⅳには皆苦労したようです。当然、全員その試験をクリアして実務補習の場にいるわけですが、共通して言えることは「全く解らなかったけど、とりあえず適当に答えを書いた」ということです。私も「営業レバレッジ」など用語の意味がわからず、とりあえず思いつくままに単語をならべて適当に解答したクチですが、どうやら他の人たちも同じ様です。よってこれから第2次試験を受ける人へアドバイスできることとしては「解答がわからなくても、なんでもいいから書く」ということです。反対に絶対やってはいけないこととしては解答欄を空白にしておくことです。的外れな答えであっても、部分点がもらえる可能性は大いにあります。というか仮に100文字の解答欄にビッシリ書いて0点ということはまずないと思います。40点に満たないで不合格になるかどうかの分かれ目は、こういった部分点を稼げるかどうかが非常に重要であると感じました。


・中小企業診断士は食える資格か?

 そもそも司法試験合格者ですら就職難だというご時世に、持っているだけで食える資格などという物があるのでしょうか?はっきり言って愚問です。実務補習でお世話になった中小企業診断士の指導員の先生が口をそろえていうのは「診断士の資格をもっているだけでは食べていけない」ということです。中小企業診断士の資格を取得したらすぐに独立する人もいるようですが、コンサルタントとして客(クライアント)を掴むのはかなり大変なことのようです。
 では中小企業診断士の資格を取得することが全く無駄かといえば、そうではないと思います。サラリーマンであっても診断士で学んだことを実務に生かし、会社もそれを評価して数万円の資格手当をつけている企業もあります。資格というもの全般にいえることでしょうが、資格をもっているだけでは何も変わらず、それを生かすも殺すも自分次第といったところでしょう。


・独学で中小企業診断士を目指すのはオススメできるか?
 私が全3回の実務補習で出会った人の中で、独学だったのは自分1人でした。独学は孤独です。正直、専門学校に通い切磋琢磨する仲間がいる環境の人をうらやましいと思ったこともあります。私は小遣いも限られ、専門学校も立地的に遠かったので独学という手段を選びましたが、経済的・時間的に余裕がある人は迷わず学校に行くべきだと思います。独学だろうと学校へ通おうと、一発合格しようと何年かかって合格しようと、得られる資格はいっしょです。自分にあった無理のない方法で資格取得を目指すべきだと思います。


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 2010年10月26日、官報に中小企業診断士登録された人の名前が載りました。そして翌27日、簡易書留で「中小企業診断士登録証」が送られてきました。2008年9月に第1次試験の勉強を始めてからすでに2年が経過しています。これだけ時間をかけて取得した登録証をどう役立てるかは、すべてこれからの自分にかかっています。

中小企業診断士登録証
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